スキーをより楽しむために−運動

 スポーツの中で、スキーほど古い歴史を有するものは極めて希で、遠く神話の時代まで遡ることができるといわれています。1929年、ノルウェー北部のラダイ島(赤い島)で発見されたスキーヤーが刻まれた石が、現存する最古の遺跡(約4,500年前)として有名です。(八代スキークラブのワッペンにデザイン)
 スキーの運動はスキー用具をつけて、変化の多い雪の山野を、思いどうりに移動する運動です。移動するスキーの運動としては、主に平地を滑歩、滑走するクロスカントリーと、斜面を滑り降りるアルペンスキーがあります。


1.アルペンスキーの運動特性(技術特性)
(1)重力による落下運動
 スキーヤーが斜面を滑り出すと、重力作用によって、斜面が続く限り滑走は続けられる。斜面を滑り降りるエネルギーは、引力によってもたらされる。
 日常生活で、歩いたり、走ったりして位置を移動する運動は、自分自身の筋力によって出す力「内力」で行われる。スキーの滑降は、引力と言う外部から働く力「外力」を原動力とし、この力を思いどうりにコントロールして目指す方向に移動するところに、他の多くの運動と著しく異なる特徴がある。

(2)複雑な状況に対応する運動
 刻々と変化する状況に的確に対応し、状況を予測して、素早く動くことが求められる運動である。

(3)用具との一体化運動
 用具を操作することにより行う運動は多いが、スキーの運動ほど用具に依存し、用具の性能に影響される運動は少ない。最近のスキー技術の高度化と、スキースポーツの大衆化は、用具の進歩に負うところが大きい。


2.スキー運動の目的
  いかに安全に、確実に、そしてスピーディに長い斜面を連続して滑り降りることができるかにある。


3.スキー運動の課題
 (1)スピードのコントロール
 (2)回転弧のコントロール


4.スキーの生涯スポーツとしての特性
 (1)自然との接触によって、新たな発見や感動が得られる。
 (2)スピード感溢れる運動は、リズムに富、爽快さ、快適さは他の運動の比ではない。
 (3)運動のスペース、運動の方向、運動の組み立ては自由である。自己実現や創造性の可能なス
    ポーツである。
 (4)外力の効率の良い使い方で、長時間の運動ができる。また省力スポーツである。
 (5)体力、年齢、性、階層に関わらずグループ活動ができ、人間関係の改善や、交流を深めることができる。
スキーをより楽しむために−理論
 
 (全日本スキー教程第3章スキー理論)
 いかなる技能の習熟段階にあっても、左右のターンを、連続して滑り降りるためには、ターンに必要な雪面抵抗をとらえることと、適切なポジションをとり、バランス良く舵取りを持続することの、二つの課題は満たさなければならない。

上達と運動の変化

1.形態的な変化
・ワイドスタンス
意図的に両スキーの内側が角付けされるように腰幅以上に広くしたスタンス。
・オープンスタンス
ワイドスタンスのように角付けの条件は満たさないが、意図的に左右のスキーを腰幅程度に広くしたスタンス。
・ナチュラルスタンス
スキーをつけて自然に立ったスタンス。その場で足踏みをするときの間隔が一応の基準となる。

2.ポジションの変化
・プルークポジション ⇒ プルーク・パラレルポジション ⇒ パラレルポジション
・部分的な抵抗力への対応から全体的な対応へ
・外脚主体の舵とりから両脚主体の舵とりへ

3.プルークポジション
・左右のスキーの間隔が広いワイドスタンスで、身体がいつも両スキーの間にあるので、左右のバランスがとり やすい。
・スキーの後ろを開いたハの字形(プルーク形)にすることで、両スキーに、次の二つの角度が生まれ、雪面からの抵抗が受けやすい。(雪面に対するスキーの角度(角付け角)と運動方向に対するスキーの角度(迎え角))上記のような理由により制動しやすく、等速で滑ることができ、前後のバランスがとりやすい。また、一方のスキーに多く加重するか、角付け角を変えることによって、左右のスキーに働く抵抗力の量、方向のバランスをくずしやすく回転運動を導き出すことができる。

4.パラレルポジション
身体とスキーがクロスして切り換えられ(クロスオーバー)両スキーのターン内側に、身体を移動させて、舵取りを行うポジションである。

パラレルポジションでの、身体と両スキーの位置を切り換える運動は、次の二つが組みあわさって行われる。
1.スキーを回転外側に動かす運動
2.身体をターン内側に移動させる運動

どちらを中心にしてターンを始動するかによって次の二つの運動に分けられる。

1.スキーヤーがスキーを動かす運動(身体に対して、スキーを動かす運動)
2.スキーに対してスキーヤーが動く運動(スキーに対して、身体を動かす運動)


スキーをより楽しむために−技術

 (全日本スキー教程第4章スキー技術)

1.スキーの基本技術として次があります
1.歩行  2.推進滑走  3.方向変換  4.登行  5.直滑降  6.プルーク  7.斜滑降  8.横滑り

2.基本技術の運動要領
1.直滑降
・両スキーの開きを、バランスの取りやすいスタンスにする。
・体重を、両方のスキーに均等に乗せ、足の裏全体で雪面を踏みつけ、バランスをとる。
・肩の力を抜いてストックを軽く握る。

2.プルーク
・かかとを、外側に均等に押し、スキーのテールを開く。
・上体は、直滑降と同様に、楽な姿勢を保ち、肩の力を抜いて、ストックを軽く握る。
・スキーのテールの開きや、角付けの度合いによって、スピードの調節をする。

3.スキーの基礎技術
基礎技術とは、あらゆるスキー運動に共通した基礎的な運動要領を取り扱った技術で、バランスを保つことが容易であり、切り換えや舵取りが、まとまりのある運動としてできる段階での技術。

1.プルークボーゲン
・スキーを八の字型に開いたまま、回転をする。
・プルークポジションで滑ると制動をかけやすく、バランスがとりやすい。
・回転にはいりやすく、ターン技術を習得するための、基本的な技術。

2.プルークターン
・プルークポジションとパラレルポジションの組み合わせによりターンをする。
・舵取りや切り換え場面で、両脚の屈伸動作を同調させた、パラレルターンへの導入要素を持った技術。
・緩・中斜面において行われる。

3.パラレルターン
・オープンスタンスで、両脚の屈伸運動をさせ、舵取り、切り換えを行う。
・応用技術の基本となる要素を持った技術。
・中斜面において行われる。

4.カービングターン
技術習得のうち、ターンに関しては、横ずれの有無により3種類のターンに分けられる。

1.スキッティング
スキーの横ずれを伴うターンをスキッティングターンとします。横ずれはしますが、弧をしっかり描きます。「方向性を維持した」ズレのあるターンです。

2.スキッティング+カービング
最も実用的で、多くのスキーヤーが目標とすべき回転です。前半は適度な横ズレを活用し、後半はズレをコントロールして細い弧に仕上げていきます。

3.カービング
スキーを「縦方向に滑らせながら」弧を描いていく回転です。推進力の大きな滑りになります。

実際は、カービングのみで滑るということは至難の技です。スキッティングとの組み合わせでより多くカービングで滑ること、その度合いを調節する技能を覚えること、そして、素早く、正確に動けるようになることが課題です。

 (全日本スキー教程、スキージャーナル、シュプールより抜粋)
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